スタートアップから上場企業まで、インセンティブ設計や資金調達の手法として広く活用されている「新株予約権(ストック・オプション)」ですが、行使する場合の手続きについて解説したいと思います。
権利を付与された役員・従業員や投資家が、実際にその権利を使うことを「新株予約権の行使」と呼びます。
行使の手続は会社法で厳格に定められており、株式会社側(会社事務)と権利者(行使する人)の双方が適切な手順を踏む必要があります。
1. 新株予約権の「行使」とは?
新株予約権とは、「あらかじめ決められた価格(行使価額)で、会社の株式の交付を受けることができる権利」です。
「行使」とは、この権利を行使して会社に払込を行い、正式に会社の株主となる手続のことを指します。
- 行使価額: 1株あたり○○円
- 行使条件: 上場後、または付与から2年経過後など
- 行使時のアクション: 権利者が会社に「行使請求書」を提出し、1株○○円×株数を会社に払い込むことで株主になる
2. 新株予約権行使の標準的な手続フロー
会社法上の規定に基づき、実際の行使手続は以下の流れで進行します。
①行使請求書の提出:権利者から会社へ。
権利者が会社に対し、行使する新株予約権の数や日時に加え、交付を受ける株式数を記載した「新株予約権行使請求書」を提出します。
②行使価額の払込:指定口座へ資金振り込み。
権利者は、あらかじめ定められた行使価額に交付を受ける株式数を乗じた金額(払込金)を、会社が指定する払込取扱機関(銀行口座)へ払い込みます。
③株主となる(効力発生):払込完了と同時に株主へ。
会社の指定口座への払込が完了した日(または請求書が到達した日のいずれか遅い日)に、権利者は自動的に会社の株主となります(会社法第282条)。株主名簿への記載手続も併せて実施します。
④変更登記の申請:行使があった日から2週間以内。
新株予約権が行使されると、「発行済株式総数」「資本金の額」「新株予約権の数・内容」に記載内容の変更が生じます。そのため、行使があった日から2週間以内に本店の所在地において商業登記(変更登記)を申請しなければなりません。
※ただし、新株予約権の行使の場合は、行使があった月の末日から2週間以内に登記申請することも認められています(会社法第915条3項)。また、同月に複数名・複数回に分けて新株予約権が行使されたときも、その全ての新株予約権の行使について当該月の末日から2週間以内に登記申請をすることも可能です(一括申請)。
3. 実務で注意すべきポイント
新株予約権の行使においては、法律・登記・税務の観点から以下の点に注意が必要です。
① 2週間以内の「変更登記」義務
新株予約権が行使されて新株が発行されると、「発行済株式総数」や「資本金の額」が増加します(※自己株式を交付した場合は株式数や資本金は増えませんが、「新株予約権の数」の変更が生じます)。
そのため、登記事項の変更申請が必須となります。
これを怠って2週間を超過すると、代表取締役個人に対して過料(罰金のようなもの)が科されるリスクがあります。
② 税務上の区分(税制適格 vs 税制非適格)
ストック・オプションの場合、税制適格要件を満たしているかどうかで課税のタイミングが異なります。
- 税制適格: 行使時には課税されず、将来株式を売却した際に株式譲渡益として課税されます。
- 税制非適格: 行使した時点の株価と行使価額との差額(値上がり益)が「給与所得」等とみなされ、行使した年度の所得税の対象となります。
③ 行使期間(権利行使期間)の確認
新株予約権には「〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで」という行使期間が割り当てられています。期間を過ぎると権利は消滅(失効)するため、スケジュールの管理が重要です。
新株予約権の行使は、権利者が株主となる重要な法的イベントであり、会社側にとっては発行済株式数や資本金が変更される登記手続の契機となります。
特に上場準備中の企業や、定期的に行使が発生する会社においては、法務・税務・登記の連携をスムーズにしておくことが欠かせません。
「行使請求書の様式を整えたい」「行使後の商業登記手続きをまとめて依頼したい」といった場合は、
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