「見猿(見ざる)」「聞か猿(聞かざる」「言わ猿(言わざる)」
日光東照宮の有名な彫刻ですから、これは皆さんご存じですね。
修学旅行でご覧になった方も、多いのではないでしょうか。
江戸時代前期に完成されたと考えられ、2017年には65年ぶりの大規模な修理がされました。
悪事を見たり、悪事を言ったり、悪事を聞いたりせず、良いことだけを受け入れていくとよい、
というような意味かと思います。
この有名な三猿は、他の7枚の彫刻と合わせて「神厩舎(しんきゅうしゃ)」の厩(うまや)の
長押(なげし)の上(屋根の下)に彫られていて、神厩舎とは、神様に仕える神馬(しんめ)が
休む場所だそうです。
何故、厩舎に猿?と思いますが、古くからの思想で、馬=火であるのに対して、猿=水であり、
「猿が馬を守る」という、厩猿(うまやさる)信仰からきているようです。
三猿は、世界的にも“Three wise monkeys”(叡智の3つの秘密)として知られあまりにも有名で
すが、他の7枚の彫刻も、よく見てみると、とても興味深いのです。
今回は、他の彫刻もじっくり見てみたいと思います。有名な三猿は二枚目の彫刻です。
一枚目は、手をかざして遠く子猿の明るい未来を見つめている親猿を、信頼しきった表情で
母猿の顔を覗き込んでいます。とてもかわいらしい図です。これは「赤ん坊時代」
二枚目が、有名な三猿で「幼年期」、良いものだけを与え、素直な心のまま成長せよという
教えなのでしょうか。
三枚目は、孤独感漂う一匹の猿が、苦しげな表情で座ったまま将来を見つめている様子。
これは「独り立ち直前」
四枚目、五枚目と続くのですが、それぞれ「青年期」「挫折と慰め」「恋に悩む」
「夫婦で乗り越える荒波」「お腹の大きい猿」の、計八枚からなっています。
お猿さんが人生とはこういうものと、語ってくれているのでしょうか。
余談ですが、現在でも神馬(雄の白馬)が午前10時から午後2時までを勤務時間として
つながれているそうなので、ぜひ一度会いに行きたいものです。
そして、初代の神馬は、徳川家康が関ケ原の戦いで乗った白馬だそうです。