最近は「相続の放棄」の手続きのご依頼が多いです。
相続のご相談を受けたときに、
「相続の放棄をしたいのですが。」とおっしゃる方が、しばしば、いらっしゃいます。
相続の放棄について、民法939条を引いてみると、
「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」とあります。
そして、相続の放棄は、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所にその旨を申述しなければなりません。
急ぎましょう!!
なんて説明をしてしまうと、相談者は???になってしまうかもしれません。
というのも、相談者のいう「相続の放棄」が
遺産のほとんどは取得するが、田舎にある山林や畑はいらない、であったり、
遺産を母が取得し、息子たちは一切もらわない、という意味で使われていることが、
往々にしてあるからです。
上記の意味での相続放棄の相談が数件続いた後に、
民法上の相続放棄のご相談がありました。
父が亡くなり、母、長男、二男という相続関係なのですが、
母が認知症らしく、相続放棄をさせて、長男、二男に財産を相続させて、
そのお金で母の面倒を見たい、というものでした。
しかし、
母が認知症ということ、
父が地元の金融機関とは顔なじみであること、
その金融機関が母が認知症らしいことを知っていること、
など総合的に考えて、
成年後見の申し立てを行ったあとに、
遺産分割を行う必要がある、という私の考えをお伝えしました。
この判断はご相談者のご希望とは、異なるものでしょう。
というのも、
成年後見制度を利用してしまうと、
特段の事情がない限り、
母の財産を減少させるような行為
(この場合、相続放棄や遺産分割によって、法定相続分以下の財産の取得)
は、家庭裁判所が認めてくれる可能性が少ないからです。
たとえ、財産は息子たちが取得して、母の面倒をみる予定でも、です。
このように、相続人の中に認知症などの成年後見制度を利用する必要がある方がいらっしゃると、
硬直的な財産の承継しかできない可能性がございます。
事前の対策として遺言書を遺しておくことは、こういう場合にも必要となりますね。