会社の本店の引っ越しをして住所が変わる場合は、会社の本店移転登記をします。
しかし、引っ越しをしたわけではないけれど、住所が変わってしまった場合の本店の表記を変更したい場合の登記は、本店移転登記となるのでしょうか?
結論をいうと、本店移転登記にはなりません!!
登記原因が「移転」ではなく「変更」になります。
なかなか触れる機会は少ないケースですので、商業登記の本などにも詳細な記載がなかったり…。
以下、パターン別に見ていきたいと思います。
(代理人申請を想定して添付書類に委任状が入っています)
1)行政による住居表示の変更がされたパターン
行政区画の変更によって、地番が変わってしまう等
登記の事由:住居表示の実施による本店の変更
これは行政の都合による住所変更なので、市町村長の証明書(住居番号決定通知書)を添付すれば、登録免許税が非課税となります。
また、住居表示の実施による変更の旨を記載した委任状を添付するのみです。
【法務局 申請書記載例】
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252673.pdf
2)ビル名が変わってしまったパターン
①オーナーの変更などにより、ビル名が変わってしまうこともあるかと思います。
本店の住所について、ビル名まで登記している場合は、もちろん変更を登記する必要があります。
<例> 東京都中央区●●3丁目3番3号梨山ビル3階
↓
東京都中央区●●3丁目3番3号柿沼ビル3階
令和 年 月 日変更
登記の事由:ビル所有者によるビル名変更に基づく本店の表示変更
(登録免許税は3万円)
この場合も、委任状に、
令和 年 月 日、当社が入居しているビルの所有者がそのビル名を「梨川ビル」から「柿沼ビル」に変更したことによる本店の表示変更登記を申請する件
といった内容を記載していれば、添付書類は委任状のみで足りるようです。
②一方、今後またビル名の変更があることを懸念して、これを機会にビル名を削除したいという場合は、注意が必要です。
このケースの場合、新ビル名を登記に記載しないという取締役会の決議が必要になります。
そのため、添付書類は、取締役会議事録と委任状です。
登記の事由:本店の表示変更
(登録免許税は3万円)
委任状の記載事項は、
本店の表示変更登記を申請する件
になります。
※管轄法務局によって、添付書類に取締役会議事録が必要か否かの判断が異なる場合もあるようなので、詳細は管轄法務局にご確認ください。
3)引っ越していないが登記上から階数を削除したいパターン
<例> 東京都中央区●●3丁目3番3号梨山ビル3階
↓
東京都中央区●●3丁目3番3号梨山ビル
令和 年 月 日変更
この場合は、前記(2)②と同様に、「本店の表示変更登記」になります。
しかしながら、ビルは同じだが部屋を引っ越ししたパターン(部屋番号や階数を変更する場合)は、本店移転登記になります。
(結局、部屋番号や階数を載せないのだから、どっちでもいいといえばそうかもしれませんが、登記原因の実体が異なるということです。)
会社の本店は、ビル名や部屋番号まで登記するかしないかは任意なので、会社の自由です。
もちろん、会社宛ての郵便物が届くように、部屋番号まで登記することもありですし、
郵便物が届くようであれば、ビル名や部屋番号まで登記しない方が、今後上記のような変更がある度に登記をし直す必要がないので、そういった費用がかさまずに済むかもしれません。
会社の本店移転や本店の表示変更について、何かお悩みがございましたら、司法書士事務所エンパシーまでお気軽にお問い合わせください。