会社の謄本をみて、監査役がいる株式会社の場合、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の登記がなされているか確認する必要があります。
というのも、平成27年5月1日から、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めのある株式会社において、その旨を登記しなければなりません。
そのため、それ以前に設立した会社で、役員重任のタイミングが訪れていない場合、次回の役員重任登記のタイミングで同時に登記することに注意が必要です。
(経過措置があるため、このタイミングが到来していなければ、登記していなくても登記懈怠にはなりません。)
単独で登記申請もできますが、役員重任登記と一緒であれば1度で済むものが、登録免許税1万円(資本金が1億円以上の会社は3万円)が2度かかってしまうことになってしまいます。
もちろん、
・平成27年5月1日以降に設立した株式会社
・監査役の変更をした株式会社
・新たに会計監査限定の監査役を設置した株式会社
が、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの登記をしていない場合は、登記懈怠となります。
<謄本記載例>
役員に関する事項 | |
監査役 京 橋 太 郎 | 平成29年 8月30日重任 平成29年 9月 1日登記 |
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定 する旨の定款の定めがある | 平成29年 9月 1日登記 |
<登記申請添付書類>
・定款または監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面
自分の会社の監査役の監査権限がどうなっているのか確認するには、定款を確認することが必要です。
定款に記載がない…という方は、下記をご確認ください。
平成18年5月1日以降に設立の株式会社において原則は、
監査役の監査の範囲は、業務監査及び会計監査(会計監査に限定する旨があれば、その範囲
※非公開会社(監査役会設置会社、会計監査人設置会社を除く。))となります。
そして、会社法整備方によるみなし規定があるため、定款に記載がなくとも、下記のとおり推定されます。
平成18年5月1日以前に設立の株式会社で、以下の条件を全て満たす場合は、会計監査に限定されています。
- 平成18年5月1日当時、資本金が1億円以下かつ負債の合計額が200億円未満
- 非公開会社(現在も非公開会社)
- 監査役に業務監査権限を付与する定款変更をしていない
- 監査役会非設置会社、会計監査人を設置していない
ちなみにですが、上記の登記申請のタイミングで、会計監査に限定の登記が漏れたとしても、法務局は何も指摘はしてくれません。
登記官からすれば、定款を見ない限り、監査役に業務監査権限があるか判断できないためです。
(役員変更登記の際、必ずしも定款を添付しないので。)
そのため、会計監査に限定する登記をしなければいけないということに、誰も気がつかないでそのままということもありえます。
後で気が付いた際に、登記懈怠を回避するため、会計監査に限定する定めを定款から削除してしまえばいいじゃないかと思うかもしれませんが、そうなると監査役が退任しなければいけなくなるなど、安易に定款変更すればよいというものでもありません。
一度、現状を司法書士など専門家にご相談することをお勧めします。
監査役がいる株式会社で、定款の整備が必要な方、上記のような状況でお困りの方は、司法書士事務所エンパシーへお気軽にお問い合わせください。
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