取締役1名の会社に取締役を追加する際の注意点

商業登記の中で一番扱うことが多いのが、取締役や監査役など役員変更の登記ではないでしょうか。

単純な登記と思われがちですが、案外気を付けないとドツボにはまりかねません。

 

もともと、下記のような取締役(兼代表取締役)が1人の会社があったとします。

取締役 A

代表取締役 A

 

<会社の定款>

…中略…

(代表取締役)

第21条 当会社に取締役を2名以上置くときは、株主総会の決議によって代表取締役1名以上を定め、そのうち1名をもって社長とする。

2 当会社に置く取締役が1名のときは、当該取締役を社長とする。

 

 

今回、会社が軌道に乗ってきて、取締役を1人(Bさん)追加したいと考えています。

代表取締役はそのまま変更せずにAさんの予定です。

そうなると、代表取締役に変更がないから、登記目的は、「取締役の変更」だから、その旨の株主総会議事録を準備して、登記申請したらOK~!

 

 

 

 

 

 

確かに、代表取締役はAさんのままで変更しませんが、実はここに落とし穴が…!

 

定款を見てお気づきの方はいるかもしれませんが、

 

そうなると、上記会社の場合は、代表取締役の選任方法は株主総会のため、株主総会で決議して、

株主総会議事録には、

①増員取締役Bの選任の件

②代表取締役Aの選定の件

を記載しなければなりません。

(代表取締役を取締役の互選で選ぶ場合は、互選書が必要)

 

最初の誤った認識で、①のみ株主総会で決議していた場合、再度②について記載した株主総会議事録を準備しなければいけなくなってしまいます💦

 

そして、ここが少しややこしいところで、

会社的には代表取締役には変更がない(Aのまま)ので、

登記申請自体には、代表取締役の変更の登記は不要なのです。

つまり、手続き的には(書類上)、代表取締役の選定をする必要があるものの、

登記的には代表取締役が退任して再度就任するというような登記はしなくてよい、

ということになります。

 

そのため、登記申請書には、取締役の就任についてのみ記載するだけです。

(上記で挙げた互選の場合は、互選書も添付しなくてよい。登記事項に変更がないから、です。)

 <申請の際の標準的な添付書類>

 ・株主総会議事録

 ・株主リスト

 ・就任承諾書

 ・印鑑証明書

 

ちなみに、取締役会非設置会社において、会社法上取締役の中から代表取締役を定めない場合には、

取締役が各自会社を代表するとされています。

その他、注意点がケースバイケースであります。

 

なので、会社の定款の確認、定款に記載が無ければ会社法等の確認がとても大切です。

 

今回の例もそうですが、一見すると簡単そうな登記申請でも、見落とすとこわい落とし穴があるので、疑問があったり不安な場合はぜひ司法書士にご相談した方が、補正せずに済むので登記も早く済むかもしれません。

 

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