こんにちは。池田です。
今回は会社の支店設置の登記のお話です。
前回、本店や本店を移転するには…というテーマについて触れました。
そもそも、本店や支店、営業所って法的にどう違うのか?という疑問も多いのではないでしょうか。
前回も触れていますが、会社を設立するにあたって、会社法上は必ず本店を定めなければなりません。
通常はこの本店で事業活動をする方も多いと思いますが、
近年のデジタル化に伴って、事業活動場所=オフィスという概念も変化しています。
そのため、登記上の本店住所とは別の場所で営業活動をすることも少なくないと思います。
本店以外の場所にお店や事務所が必要となった場合に、
「支店」を設置するのか、
それとも「営業所」なのかで実は大きく異なってきます。
①支店
支店とは、本店から離れて独自に営業活動を行うことができる組織のことです。
つまり、本店以外に自分で考えて事業活動を行うことができる拠点が支店です。
営業所員のほかに、総務や経理などのバックオフィス業務を担う方が常駐しているケースもあります。
支店は、本店と同じような機能や権限を持つことができるため、
設置するためには取締役会の承認、
または取締役の過半数の承認(取締役会の設置がない場合)が必要になります。(会社法第362第4項第4号)
さらに、法務局での登記も必要となります。
本店の所在地で登記を行い、その後、支店の所在地で登記します。
株式会社の支店の場合は、支店に支配人を置くことが可能です。
支配人を置くことで、意思決定や責任の所在がはっきりし、事業を拡大しやすくなるメリットがあります。
②営業所
営業所とは、営業活動をしている拠点のことをいいます。
営業所はあくまで営業を行う拠点のため、そこで意思決定などを行うことはありません。
営業所では、本店と同じような機能や権限を持つことはできないため、法務局での登記は不要です。
ここが支店との一番大きな違いです。
登記をする必要がないため、比較的容易に営業所を設置することができます。
なぜ、法人は支店を設置するのか
登記が必要のない営業所の方が、
コストもかからず簡単なように思いますが、
支店を設置した場合、下記のようなメリットがあります。
・権限を委任できる
法人が支店を設置する場合は、一定の範囲の権限を委任することが可能です。
(権限の範囲は、法人によって任意に決めることができます。)
例えば、支店なら他社とビジネスにおける契約を結ぶことさえできます。
本店とはスムーズに契約を結ぶことで、スピード感ある柔軟な意思決定を行うことができ、ビジネスに反映できます。
営業所の場合では、常に本店の意思決定機関などで承認を得る必要があるため、意思決定スピード遅くなりがちです。
・融資を受けることができる
支店は法務局に登記された権限を持つ組織であるため、そこで作成された財務諸表も外部に認められます。
支店独自で金融機関から融資を受けることができ、設備投資や事業拡大など資金繰りに幅を持たせられます。
コロナ融資の関係で、支店設置を検討されている方がとても増えている印象です。
・公共事業の入札ができる
公共事業の入札については、その地域の活性化を目的に、地元企業を優先するケースも多いです。
支店がある場合は入札が可能な公共事業もあり、安定した仕事の受注が見込めることもあります。
ただし、支店設置には、登記費用やその管理費用(廃止にする場合も登記が必要)、
労務や税務等、それぞれの手続が発生することもあり、コスト等のデメリットも含めた検討が必要です。
どのように組織や営業活動を運営するかは各専門家とも検討して進めることをお勧めします。