皆さん、こんにちわ。
司法書士の柿沼です。
今日は、身の回りの気になること?
「出世払い」について、
裁判所がどう結論付けているかをご紹介します。
私の同級生の友人に弁理士のA氏がいます。
A氏が弁理士試験の受験生だった時分、
私は先に司法書士試験に合格して、すでに働いていました。
資格は違えど、1年に1回の国家試験に対する悩みや不安はそんなに変わりはなく、
私は、ささやかながら、A氏の勉強についての相談に乗ったり、ご飯をおごったりしていました。
そして、A氏は、ことあるごとに「この恩は、出世したら返すわ~。」と言うのでした。
すでに、A氏は弁理士試験に合格し、弁理士となり、
都内の事務所で働いて、一定期間が経過しました。
「時は来たり!!!」
と考えて、A氏に出世払いを請求したら、どうなるのでしょうか。
仮に、A氏が「この恩は、令和1年10月31日に返すわ~。」と言っていたら、
私は、この日が来るのを心待ちにして、
令和1年10月31日に叙々苑に連れてってもらえば良いわけです。
これを、「期限」と言います。
「期限」は、将来到来することが確実な事実を基準とする場合に使います。
これに対して、将来到来することが不確定な事実を基準とする場合には、
「条件」と言います。
それでは、
「この恩は、出世したら返すわ~。」は、「期限」でしょうか、「条件」でしょうか。
A氏が出世するかどうかは、不確定な事実なので「条件」でしょ、
と考えるのが第一感かなと思います。
しかし、東京地裁平成8年10月31日判決は、
「A氏が出世した時または出世が不可能であることが確定した時」
に返すという不確定の期限付債務と判断しています。
なぜなら、A氏が出世しなければ永遠に返さなくてよいと契約は、
A氏にとって都合がよすぎるからです。
したがって、
私がA氏に対して、
出世払いによる焼肉代金請求権に基づき裁判を起こして
A氏が勝ったときは、
裁判所が、
「A氏はまだ出世していない」
もしくは、
「A氏が出世することが不可能であると確定した」と判断したことになり、
それはそれで、悲しい結果となるのです。
参考文献/
ゼミナール民法入門第4版
道垣内弘人著 P232